約束を果たしに ~車いすで箱根温泉旅行に挑戦~ #3

旅の楽しみといえば、おいしい食事。

しかし主人は、嚥下障害のために医師から経口摂取を全面禁止されてきました。
家に戻ってそろりそろり、口から食べる練習を独自に進め、
昨年12月から本格的な経口摂取を再開し、
今は家では3食、水分も含めすべて口から食べています。

ただし、嚥下障害が治った訳ではありません。
先月行ったVF(嚥下造影検査)で明らかになりましたが、
実はそれほど嚥下反射が回復しているわけではないのです。
今も、訪問で来てくれているSTさんの顔には
『どうなっても知りませんよ』
と書いてあります。
でも、熱心にリハビリに取り組んでくれます。ありがたいですね。


まだ肺炎に至らないのは、誤嚥が少量なこと、体力があること、
むせ反応が良くなってきていること、
そして咀嚼や飲み込む力は確実に回復していること、
最後に嚥下の神様のご加護(つまりは運)があること…ではなく
往診のU先生が日頃の健康状態をしっかり見守って下さっているからだと思います。


それにしても…。
どうしようか。

食事に関してはずっと悩んでいました。
旅先で誤嚥をおこして救急車を呼ぶようなことになったら、もう大変です。
まず受け入れてくれる病院が見つかるかどうかがすでに疑問。

素泊まりのプランを選び主人には胃ろうから流動食を、
私はコンビニでおにぎりか、カップラーメンでも食べようか。

でもそれでは、あまりにも寂しすぎますし、
今の主人の意識レベルからいっても、流動食では納得しないでしょう。

うーむ。
例え覚醒しても疲れていると、嚥下が弱くなってしまうので、
絶対に口から食べられるという確信がもてません。


どうしよう。
……。


旅行が10日前に迫ってきて、私は腹をくくりました。
もし誤嚥を起こして、受け入れ先が見つからなければ箱根から民間救急車で地元まで運んでこよう。
U先生には申し訳ないけど、頭を下げて搬送先を探してもらおう。
(もちろん旅行に行くことは伝えました)

そして、私はホテルの予約係の方あてに長い長いメールを送りました。



まず嚥下障害とはなんぞやから始まって、
主人の様子を細かく説明し、
家で出している食事の写真を添付して量・内容を説明し、
食べられない食品リスト、飲み込みやすい調理法(一般的な刻み食ではない)
そして、この旅行を主人がどれほど楽しみにしているかを切々と訴え、
老舗ホテルの料理人としてのプライドと料理人魂を煽り…(おいおい)。


自画自賛の名文ができあがりました。


まぁ文章でどれほど伝わるかはわかりませんが。
これでもし、誤嚥の危険があって対応できないと言われたら、
しょうがない、主人は流動食、私はコンビニのおにぎりです。


翌日、ちょうど土曜日で訪問看護師さんがせっせと摘便している時に電話がなりました。
見慣れない番号です。
「もしもし」
メールを送った、ホテルの予約係の方からでした。


なんと、断るどころか料理長さんと相談して下さって、
主人のために、コースのお料理をベースにして
独自のメニューを用意してくれるというのです!


送られてきたメニューは、思いもかけない、とってもとっても素敵なものでした。


突き出し
小田原梅干し蜜煮
ふきのとう佃煮風

吸物
あおさ真丈 小メロン 白舞茸 うす葛あん仕立

造里
鮮魚杉盛り 小角鮪 山葵

焼物
太刀魚の西京焼きおろし和え

煮物
百合根万頭 葛あんかけ

揚物
海老とメゴチの天婦羅
舞茸 茄子 美味あん掛け


まあ…。

コースと同じお料理で柔らかい食材に変更してあるものもあり、
全く別のお料理になっているのもあります。
何より、どれもおいしそうじゃないですか!(イメージだけど)

そして私の希望どおり食材は刻み食ではなく、一口大にしてくださるとのこと。
これなら、見た目も通常食に近いお料理が出てくる可能性が高くなって来ました。



夢見てるんじゃなかろうか。




大喜びで、摘便が終わってすっきりした顔の主人(と横にいた看護師さん)に伝えたら、
「うっそだ」
「嘘じゃないよ、本当だよ」
「まったぁ」
「本当だってば、ほら見て」

メールのプリントアウトを見て、正確には理解できなくても
『自分のために特別に作ってくれる料理』というのがピンときたらしく、
主人は目を輝かせました。

そして、私と主人以上に喜んでくれたのは看護師さんでした。
「すごいすごい!楽しんできてくださいね!写真絶対撮ってきてください!」


看護師さんが帰った後で、メニューの内容を確認するため予約係の方と電話で話しました。
「ところで、朝食はどうされますか?」
「ビュッフェで大丈夫だと思います」


ビュッフェのメニューを見たところ、ポテトサラダやヨーグルト、フレンチトースト、
その場で焼いてくれるオムレツもありますので、
これで十分お腹いっぱいだと思います。
水分は朝のうちに胃ろうから入れて、
食事の時はとろみをつけた紅茶や、ジュースを少量なら大丈夫かな。


ちなみに昼食は、行きはホテルのカフェレストランでドリアを頼むことにしました。
近所のファミレスで何度も食べているメニューです。

もし眠っていたら注入で対応すれば良いのですからね。

帰りのお昼はちょうど移動中にあたってしまうので、
駅で軽くパンでも食べる予定です。
移動中は眠るでしょうし、家に戻っても疲れですぐベッドへ行くでしょう。
そうしたら水分なり流動食を注入すればいいや。


せっかく造設した胃ろうなんですから、積極的に活用しなくちゃね。



何だか一気に期待が膨らんできました。

やっぱり食べる楽しみって大事ですね!

<続く>
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Comment

  • 2012/05/26 (Sat) 10:52
    # -
    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • 2012/05/26 (Sat) 18:05
    西の魔女ちゃん #mQop/nM. - URL
    バリアフリーって

    言葉では知られていますが、時と場合によって
    隅々に配慮されてこそ、本物ですね

    発信しなければ相手にはわからない
    これが基本だといつも思っています
    ダメで元々なので、とにかく伝えてみよう
    それが第一歩だし、次の人へつなぐこともできますよね

    mikomonaさんは先駆者として大変でしょうが
    ホテル側も貴重な体験をさせてもらえることになるでしょうね


  • 2012/05/26 (Sat) 22:12
    おやぢパパ #- - URL
    すごいすごい!

    ここまでしてくれるなんて、何と言うホテルでしょう!
    そして、ホテルをここまで煽るなんて、何と言う嫁でしょう!(笑)

    記事を読んでいるこちらまで、感動と期待が膨らみます!

    続きが楽しみです♪

  • 2012/05/29 (Tue) 00:37
    mikomona #- - URL
    西の魔女ちゃん さん、こんばんは。

    そうですね、バリアフリーといっても、健常者側(という表現が適切かどうかはさておき)の
    思い込みで作られるものが多い気がします。
    それを実際に使う人は、置き去りにされがちです。


    ところで、
    NHKEテレの『バリバラ〜障害者情報バラエティー〜』という番組、ご覧になったことありますか?
    時間があったらぜひ一度ご覧になって下さい。
    以前『きらっといきる』という名前だった時に、使いにくい『バリアフリートイレ』として
    NHK自身のトイレを紹介していて、以来大好きな番組なりました(笑)

    バリアは段差や階段にあるのではないな、人の心にあるものなんだなと
    しみじみ思い知らされる番組です。

  • 2012/05/29 (Tue) 00:51
    mikomona #- - URL
    おやぢパパさん、こんばんは。

    今頃は出張中でしょうか。お疲れ様です。

    今回は本当にホテルに恵まれました。
    ありがたいです。

    なかなかここまでしてくれるところはないです。
    思い切ってやってみて、本当に良かったです。

    旅行の準備でかなり引っ張ってしまいましたが、続き、頑張って書きますね!

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2012/05/26 (Sat) 00:09

旅の楽しみといえば、おいしい食事。しかし主人は、嚥下障害のために医師から経口摂取を全面禁止されてきました。家に戻ってそろりそろり、口から食べる練習を独自に進め、昨年12月

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