うちの胃ろう生活 #3 手術(誤嚥防止術)という選択

前回、主人に胃ろうを勧められた当時、私には選択肢がないと書きましたが
実はありました。
『誤嚥防止術』です。

術といっても魔術ではなく、手術のこと。
4年前に私が調べた範囲では『喉頭気管分離』しか分からなかったのですが、
症状に応じていろいろな手術があるのですね。

Mindsガイドラインセンターというwebサイトのこちらに手術の種類や概要がまとめられています。


なぜ誤嚥するかというと、原因はさまざまあれど、結局は人間の体の構造上の問題です。

気管と食道は、口の奥(喉頭部)ではつながっていて、かつ気管は筒状をしていて開放しています。
一方食道は伸縮性のある柔らかい器官で、私がX線で見た主人の食道はぺたんこになってました。
だからいろいろな大きさや固さの食物を飲み込むことができるし、胃に空気が入ってパンパンになることもないわけです。
普段私たちは嚥下も呼吸も全く意識していませんが、
それは喉頭を中心に多くの器官が統制のとれた共同作業を素早くこなしているからです。
これはものすごく繊細で、素早い仕事です。
VF(X線を使った嚥下造影検査)で主人の嚥下の状態を見た時、
その繊細で複雑な動きに感動し、誇張ではなく、神の存在を感じました。
同時にほんのひとさじのゼリーがダラダラと気管へ垂れ込んでいくのに絶望もしましたが。

さて、食べ物を飲み込む時、いわゆる『ごっくん』すると喉仏が持つ上がり、喉頭蓋という部分が動いてパタッと気管に蓋をするのですが、遅かったり弱かったり、あるいは全く動かなかったりすると気管へ垂れ込みます。
これが誤嚥です。
ちなみに食べ物ではないものを誤って飲むことは誤飲といいます。

嚥下は反射運動なので誤嚥しても途中で止める事が難しいです。
また喉頭を通過するスピードは約0.5秒と早いため、皆さんもたまにむせることがあるでしょうが、事前に気づいて止めるなんて無理だと思います。

気管と食道を手術により分離すれば、誤嚥は100%防止できます。
手術後は全く普通の食事を食べることができます。

すごい!これなら胃ろうを作らなくて済む!なんでも食べさせてあげられる!

と思いました。


ただし、食道と気管を分離している間は声が出なくなるというのを知り、断念しました。



失語症なのだから、声が出なくてもいいんじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
話すだけではなく、読む、聞く、書く、全てに関わってくるのが失語症です。
実際は脳のどこにどのぐらいダメージを負ったかによって症状は様々なのですが、
主人の失語症はかなり重度で、上記全ての言語能力が著しく低い状態です。

つまり、主人は筆記具も点字も手話も50音表もマウスも使えません。
『声を出す(主におーい、おーい)』、『指差し』、『顔の表情』が、数少ないコミュニケーションの手段なのです。

そんな主人から声を奪う選択はできませんでした。



また、4年前の私の知識では、
誤嚥防止術は例えば気管切開されているお子さんやALSの患者さん、また喉頭がんの方などに実施される事が多く、
手術をする理由も口から食べたいよりも、唾液の誤嚥による頻回な吸引の緩和や、誤嚥性肺炎の防止・予防が目的であり、
実施している病院も限られていたようでした。
主人を診て下さったどの医師、看護師、介護職の方からも、誤嚥防止術についての話はありませんでした。


今朝、主人は非常に珍しく、
私の「おはよう」に
「おはようございます」
とはっきり答えてくれました。

こういう時には、声を残して良かったと思うのです。
でも誤嚥して激しくむせたり、痰が大量に上がってきて苦しんでいるのを見ると
果たしてどちらが良かったのかと悩みます。

声を残すのか、食の楽しみを取り戻すのか。
絶対に妥協できない二択…。
難しいです。

ですが、気管切開しても誤嚥がある方、誤嚥しても咳でむせて出す事ができないような方には非常に有効な手術だと思います。
また、ご自分で納得されて手術を望む方もいるそうです。

どちらを選択するにしても、ご本人もしくはご家族の希望に添う結果が一番なのでしょうね。
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