ボツリヌス療法を受ける前に考えておくこと

ボツリヌス療法(ボトックス)は、痙縮や眼瞼痙攣の治療など純粋に医療目的で行われるものと、
しわ取り、えらを小さくするなど美容目的で行われるものがあります。

原理はどちらも同じで、食中毒を起こすボツリヌス菌が作りだす毒素で神経を麻痺させ、
筋肉を弛緩させます。

最近ニュースで『化血研』の名前を聞くことがありますが、
『無届でボツリヌス毒素を運んだ』というニュースでちょっとどきっとしました。
ボツリヌス療法で使われるのは『A型ボツリヌス毒素』だからです。

そうか、生物テロに利用できるんだ…。

そうなんです、ボツリヌス毒素ってものすごい毒性が強いんですよね。
(自然界最強だそうです)
もちろんボツリヌス療法で使われるお薬はごく微量で、感染力もないそうです。

一般にボトックス注射は安全性が高いと言われていますが、副作用の詳細を読むとなかなか怖いです。
主人に関係ありそうな重大な副作用は
※アナフィラキシーショック 0.01%
※嚥下障害 0.73% 呼吸障害 0.03%
※けいれん発作 0.01%

※注射した場所から離れた筋肉に脱力が出ることがある

上肢痙縮の患者さんに出やすい副作用の主なものは
※脱力(感) 2.83%、CPKの上昇 2.83%
です。

むむむ…。

怖がり始めたらキリがありませんが、やはりよく効く薬というのは副作用も重いと考えておかないと。

そして痙縮を弱めるためにはどの筋肉に打てばいいのか、どこに目指す筋肉があるのかなど解剖学の知識がある
専門の医師に診てもらう方が安心だと思います。もちろん絶対確実ではありませんが。


ちなみにボトックス注射が受けられない患者さんもいます。
重症筋無力症、ALSなど全身性の筋肉の病気の患者さん、
胎児への影響がはっきり分かっていないので妊婦さん(授乳中も)にも投与できません。
妊娠の可能性がある方は投与から3ヶ月は避妊するよう指示されています。

そして重度の嚥下障害の方(例えば日常的に痰の吸引が必要な方など)への投与は慎重に行うべきだと思います。
(個人的な感想です)

もちろん、主人も嚥下障害がありますが、主治医のU先生も専門外来の先生も
「上肢痙縮の患者さんに嚥下障害の副作用が出る確率はかなり低い」
と同じ意見でした。

低いから大丈夫という訳ではないので、すごく考えましたが、
このまま拘縮まで悪化させた時のデメリットを勘案し、接種を決めました。

ボツリヌス毒素の効果が薄れれば副作用も薄れるのですから。

そうそう、ボツリヌス注射の効果はだいたい3ヶ月と言われています。
U先生は2ヶ月ぐらいで効果がなくなってくると言ってました。
なので、引き続き治療を受ける場合はまた病院を受診して打たなくてはいけません。

一回だけなら良いのですが、例えば3ヶ月おきに打ち続けるとすると、また別の問題が出てきます。

お金です。
ボトックスで使われるボツリヌス毒素の薬価は100単位で87,536円。
上肢痙縮には240単位を上限に打ちますから、一回のボトックス注射で約21万円かかるのです。

うっ…。

主人は身体障害者手帳の2級に認めて頂いているので、医療費はかかりませんが、
だからといって好きなように使っていい訳がありません。

いえ、むしろ医療費の自己負担がないからこそ、考えなくてはいけませんよね。
本当に必要なのか。
私はもし、主人の腫瘍が再々発したり、脳梗塞などで意識がなくなったりした時には
延命治療は拒否するつもりでいますが、
主人はただ生きているだけでも、医療費がかかります。
そして今後年をとるにつれ、様々な体の問題が出てくるでしょう。


医師によっては、高齢者や障害者に医療を施す事をあからさまに嫌がる人がいます。
(嫌な話ですが本当です)
『お金がかかるから』だそうです。
『医療のリハビリっていうのは、社会に復帰できるような人のためにあるんですよ、奥さん』
と傲然と言い放たれたこともあります。

社会の役に立たないごく潰しは寝たきりになったって、医療保険が面倒みることではない。医者の知ったことじゃない。

寝たきりになって、拘縮で身体がガチガチになって、
主人の苦痛はもちろん、介護者がどれほど負担を強いられるのかは全く考えていないようでした。

自分で立って、おむつじゃなくてトイレで排泄させてあげたい。
胃ろうじゃなくて、自分の口から食事を取らせてあげたい。
人間としての尊厳を最期まで保てるように、努力したい。

という願いに全く価値を認めないお医者さんがこの世にいるんだというのを飲み込むまでには
かなり時間がかかりました。

そういう医者が悪だとか何だとかではなく、価値観が違うだけなんだと。
(ま、ご自分がもし主人と同じ立場になったらどうなるかは知りませんけどね)


もちろん、そういうお医者さんだけではありません。
患者の気持ちを考えて、その上で医療費の事も考慮していろんなアドバイスをくれるU先生や、
『奥さんが希望するなら、精一杯の治療はさせてもらう』と言ってくれたT先生(本当に感謝です)
『僕がご主人の立場になったら、やっぱり食べますね』と言ってくれたリハビリ科の先生。
(おかげで私は勇気を持てたんです)

主人を1人の人間として扱ってくれて、本当に本当にありがとうございます。

あ、話がまたそれてしまいました。
今回受診した痙縮外来の先生も、とても気さくな先生でした。
なので、自分の希望を正直に話すことができましたし、納得して治療を受けることができました。


次回、実際にボトックス注射を打った話を書きますね。
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Comment

  • 2015/12/27 (Sun) 00:16
    だだ #- - URL

    こんにちは。
    私もボトックスは考えたことがあるので興味津々で読ませて頂いています。なんとなく怖くて手が出せていませんが…。
    効果が3か月しかもたないのは悩ましいですね。止めてまた拘縮してしまうのも辛い気もしますし。でも本当に、医療費を使わせてもらっていることも考えなければいけませんね…難しいところです。

    それにしても、そんなキツいことを言うお医者さんがいるとは衝撃です。
    世の中いろいろな人がいるものですね。

  • 2015/12/27 (Sun) 13:09
    mikomona #- - URL
    だださん、こんにちは。

    だださん、こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    主人の場合、ボトックスは命に関わるというよりは、QOLを維持するための治療なので、
    余計に接種をためらいました。
    でも拘縮させてしまうと、一生そのままですからねぇ…。
    施設などで、胸に腕がくっつくほど拘縮された方を見てますから、本当に悩みました。


    なぜか私、『モンスターペイシェント』のように見られるらしく医者にウケが悪いんですよね。
    看護師さんにも医師にも質問はしても文句言ったこと無いのに~~~~。

    「奥さんのように何でもできる方は…」
    とか
    「奥さんのほうがよくご存知でしょう」
    とか。
    なんで????こちとら完全なトーシロですよ???

    生意気なことを言いそうな顔をしてるのか、
    キツイこと言われても堪えないようにみえるのか…?謎です。

    でも、主人は看護師さんに可愛がられるタイプで、病棟では優しく接してもらってるのを知ってましたから、
    私が何を言われてもあんまり気になりませんでしたけどね。
    (こういう態度がいかんのでしょうか?)

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