早期退院させるだけでは…

先日、仕事が少し遅くなって、19時過ぎに地元駅に着き、自転車に乗って帰宅途中のことです。

夏至の直後で日が長いとはいえ、すでに薄暗い状態でした。

家のすぐ近くの商店街の角を曲がったところで、おばあさんが歩いている脇を追い越したのですが、
小さなキャリーケースを引っ張りながら、腰を曲げ、小股で、非常に歩きにくそうなんです。
もうすぐ真っ暗になるけど、大丈夫なのかしら。
どこまで歩いて行くのかしら。

一度追い越して、どうしても気になって、家に自転車を置いてからおばあさんのところに戻りました。
(家で主人の見守りをお願いしているヘルパーさんには連絡済み)

やっぱり全然進んでない。

思い切って声を掛けました。
「あの、大丈夫ですか?」
「…?」
「何かお手伝いできますか?荷物を持ちましょうか」
「あら、まあ、すいません、腰が痛いもんで…」
「大丈夫ですよ。私につかまってもいいんですよ。お家は近くですか?」
「はい、すぐそこの団地なんですよ」
「じゃそこまで一緒に行きましょう」
「まあ、すいません、ほんとに」
「いえいえ、ゆっくりで大丈夫です。休みながら行きましょうね」

おばあさんは片手で塀につかまりながら、片手を私に預けて歩き出しました。
主人が杖歩行していた頃の歩行介助を思い出しながら、
決して引っ張らないように、一歩ずつ足が出るのを確認しながら歩きます。

「あんがい道ってでこぼこしてるでしょう、どうにも恐くてね」
「そうでしょう。私も家で家族を介護してるから分かりますよ。転んだら大変ですから慎重にいきましょうね」

話を聞くと(良く話してくれるおばあさんでした)
心臓の病気で入院、転院を繰り返して8ヶ月ぶりに退院したばかり。
団地で一人暮らし。
ヘルパーさんが来てくれるが、時間が決まっているので買い物まで頼めない。
今日は調子が良いので買い物に出たが、帰り道で疲れが出て困っていた。

うーん。

この方、80代で、認知症はなく、とてもしっかりしたおばあさんなんですが、
いかんせん体力がないのでしょう。
とても一人で買い物に行けるような感じではありません。

もちろん、身体を動かすことがリハビリになるという考え方もあるでしょう。
でも、ちょっとした段差や道路のひびにも足がすくむようなおばあさんが、薄暗い道を一人で荷物を持って歩くなんて
危険すぎます。

団地の入り口まで、私なら1分で歩ける距離を、15分かかってたどり着きました。
特に道路の横断が大変でした。
車道は平らに見えても、実は歩道の脇がちょっと低くて(雨水対策かな)
つかまる場所もないので、車道から歩道へ上がる時に、足がすくんでしまいます。
結局両手で私につかまり、私がおばあさんの身体を支えてほんの数㎝の段差を越えました。


おばあさんは汗だくでした。
本当はお部屋まで送って行って、無事に帰宅するのを見届けたかったのですが、
「ここで少し休んでいくわ。本当にもう大丈夫ですから。助かりました」
と、建物入り口の階段(3段しかない)に座り込んでしまったので、
荷物を階段の上に置いて、その場を離れました。

何度も何度もお礼を言ってたおばあさん。

帰っても一人っきり。
誰の見守りもなく、一晩過ごすのかな…。
ご飯食べられたかしら。
ちゃんとお水飲んでるかしら。

家に戻っても、気になって仕方ありません。

もちろん、社会的入院が良いとは全然思いません。
早期退院は大切なことですが、
それは退院後の受け入れ体勢が整っているのが大前提だと思うんです。

こうした独居高齢者の窮状は、ニュースで数字として取り上げられる事があっても
一人一人の事情まではなかなか分かりませんし、きめ細かな対応は、現実の福祉サービスの範囲では不可能というのが現状です。

今後、こういう独居の高齢者はどんどん増えていきます。
私も予備軍です。


おばあさん、今日、ちゃんとご飯食べたかなぁ…。
今日、誰かと笑えたかなぁ…。

つかまるところがなくて、公園の生け垣の枝を掴みながら
「ごめんね、ごめんね」
と木に謝っていた、優しいおばあさん。

心がちくんと傷むできごとでした。
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Comment

  • 2017/06/24 (Sat) 18:24
    タンム― #- - URL
    No title

    いやー心が痛む。そうですか。
    自分も何度か困っているお年寄りに
    手を貸したことはあるけども、
    自分はその時ちょっといいことしたかな、
    で終わりだけど、そういう方は、
    ずっとそのあとも不自由な生活が続くんだもんね。
    でも心の優しいmikomonaさんて素敵だよ。

  • 2017/06/25 (Sun) 07:01
    はるのおかん #- - URL
    No title

    お久しぶりです。

    ついこの前、片側2車線の道路を右折しようと信号待ちしていた時の事です。
    信号が青になったのですが、自分は右折でしたから待機していました。
    歩道には、ご夫婦と思われる老男女。二人の間は少し離れていました。信号待ちしている時からおばあちゃんの姿勢は悪く(腰と膝が微妙に曲がり スタスタ歩ける様子ではない) 一体、どこを歩くつもりなのか?と心配で見ていました。
    すると、青になった信号を確認し、男性が女性の手をとり歩き始めました。
    まさかのまさか、老夫婦は、4車線の横断歩道を渡り始めました。
    信号が青になった事を確認し、おじいちゃんがおばあちゃんの手を取り歩き始める・・・二人が一車線を通過する頃には、もう、信号は点滅していました。
    おばあちゃんの一歩は 足一つ半程度でした。
    2車線を通過する頃には、信号は 赤 です。(まだ、半分)

    もちろん、どのドライバーも、二人を見届けてからスタートしていましたが、
    お二人の進んだ方向には、道が狭く歩道もありません。
    一体、どこに向かったのか?


    何が一番いいって事はないのかもしれませんが、こぼれている事っていっぱいあるんだなと思いました。
    切なくなります。

    私は、お二人をお手伝いする事は出来ませんでしたが、似たような出来事で胸が痛くなり、コメントさせて頂きました。



    娘がね、ミシンが欲しいと時々言うのですよ。
    体型に合った洋服がなくて。
    購入すると、私がやらねばならぬ事になりそうなので、ひたすら却下していますけどね。
    mikomonaさんのブログ読みながら、イメージだけは膨らましています(笑)

  • 2017/06/25 (Sun) 11:23
    mikomona #- - URL
    タンムーさん、こんにちは。

    コメントありがとうございます。

    うちの地元は高齢者が多く、どうやって一人暮らしできてるのか不思議に思うほど
    危なっかしい方はけっこう多いんですよ。
    近所のコンビニの前では高齢者がらみの交通事故がありますし、
    孤独死も時々耳にします。
    かといって、こちらもできる時にしかお手伝いできないし、
    『地域で支え合って生きる』なんて、聞こえはいいけど実際はどうなんだろう?と疑問に感じます。

    私も主人のことがなければ、困っている人を見かけてもどうしてあげたら良いのか分からなかったでしょう。
    決して主人が病気になって良かったとは思いませんが、何事も経験なんですね。

  • 2017/06/25 (Sun) 11:55
    mikomona #- - URL
    はるのおかんさん、こんにちは。

    こちらこそお久しぶりです。
    コメントありがとうございます。

    うちの地元は広い道路はないんですが、古い町並みなので歩道が狭いうえに電柱が邪魔をし、道路はガタガタ、
    街灯がほとんど無くて夜は真っ暗という場所もあるんですよ。
    おばあさんが住んでいる古い団地は階段の一段一段が高く、ひびやマンホールの蓋などの段差が多くて
    ちょっとそこまで、も危険な環境です。

    ご本人が危ないというだけでなく、こういう方が道路を横断中に交通事故にあったとしたら
    運転している方だって大変な負担です。
    (実際、うちの近所のコンビニ前では高齢者がらみの事故が多いんです)

    もちろん、私より元気なお年寄りもたくさんおられるんですが、
    じゃあそういう方が他の高齢者をずっと助けていけるかというと、きっと難しいでしょう。

    今後の介護福祉サービスがどこまで落ちていくのか分かりません。
    私が高齢者になるころには、木っ端みじんになってる可能性が高いかな?

    ま、いつでも、どこでも、自分にできることをするしかないですね。


    ところで、今のミシンって本当に使いやすいですよ。
    ネットで有料無料の型紙もたくさん手に入ります。
    初心者でも縫いやすく、作りやすく、おしゃれな型紙じゃないと売れませんから、
    作る方も本当にいろいろ努力されてます。

    もちろん、素人が安いミシンで縫うものは既製品の完成度には及びませんが、
    自分の体型に合わせて作った服は格別です。

    私が初めて縫った服は自分用のイージーパンツなんですが、
    ネットの説明どおりにお尻のサイズを測って型紙を引くだけで、ビックリするほど着心地が良いんです。
    これを着たら、例え安くても、縫製がきれいでも、既製品を買う気が失せます。
    多少縫い目が凸凹だって家では誰も気にしませんからね。

    服を作ってはぎれが出たら、巾着やシュシュなど簡単に縫えるものを自分で作れます。
    細かな布きれをミシンで縫い合わせて簡単パッチワークも楽しいですよ。

    あ、すいませんついつい長々語ってしまいました。
    『ソーイング熱』にかかってるようです(笑)

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